グルー治療は安全?全国調査で判明した合併症の実態
「切らずに治せる下肢静脈瘤治療」として注目を集めるグルー治療(正式名称:血管内塞栓術、英語ではCAC:Cyanoacrylate Closure)。健康保険では「血管内塞栓術」として扱われていますが、一般的には「グルー治療」と呼ばれています。本記事では全国24,000人以上の症例データをもとに、安全性や合併症の実態、信頼できる施設の選び方について詳しく解説します。
グルー治療とは?
グルー治療は、医療用接着剤(シアノアクリレート)を用いて静脈内を閉塞する新しい治療法です。メスを使わず、局所麻酔で対応できるため、患者さんの身体的負担が少なく、治療後すぐに歩いて帰宅できるのが特徴です。

Venaseal Closure System(画像提供:Medtronic)
全国24,000人超の調査から見えたグルー治療の安全性
2023年、日本静脈学会の委員会が実施した全国調査により、グルー治療の安全性が明らかになりました。2020年から2023年の間に施行された24,209件の症例データに基づいています。
下肢静脈瘤血管内塞栓術(ベナシールクロジャーシステム)における本邦での有害事象アンケート解析論文報告の第2報の論文
血栓症の発生率
- 全体の静脈血栓塞栓症:0.59%(142例)
- 肺塞栓症:0.01%(3例)
- 深部静脈血栓症(DVT):0.04%(9例)
- アブレーション関連血栓拡張:0.39%(95例)
特に、症例数が少ない施設ではDVTの発生率が高く、施行件数の多い施設との間で12倍以上の差があることが示されました。
手術経験の少ない施設ほど血栓の合併症が多いという重要な知見も得られ、クリニック選びの際に医師の治療経験数が非常に大きな判断材料となります。
静脈炎とアレルギー反応
- 治療が必要な局所性静脈炎:6.8%(1,656例)
- 抗ヒスタミン薬が必要な過敏症:960例
- ステロイド治療を要した全身性過敏症:65例(0.27%)
命に関わるようなアナフィラキシーや脳卒中は報告されていませんが、薬物治療を必要とするアレルギー反応が一定数見られました。
接着剤除去が必要だったケース
9人の患者で、感染(4例)、過敏反応(4例)、肉芽腫形成(1例)により接着剤の外科的除去が行われました。
なぜ多くの手術を行っている施設の方が安全なのか?
調査では、手術件数の多い施設では血栓などの重篤な合併症の発生率が明らかに低いことが示されました。これは、医師の技術や経験の差、術後のフォロー体制の違いが大きく影響していると考えられます。
グルー治療はどんな人に向いている?
- 仕事などの理由で、傷跡を避けたい方
- 日帰り治療を希望する方
- 局所麻酔で治療を受けたい方
- 再発例や高齢者で体への負担を最小限にしたい方
ただし、アレルギー体質の方や以前に接着剤でかぶれたことがある方は、事前に医師へ申告し、慎重な判断が求められます。
治療前に確認しておきたいポイント
- 過去のアレルギー歴を医師に伝える
- 術後の経過観察・緊急時対応の有無を確認する
- 実績のある施設かどうかをチェック
施術前の説明が丁寧か、治療に関する選択肢をきちんと提示してくれるかも大切な判断基準になります。
まとめ|グルー治療は「選び方」で安全性が変わる
今回の全国調査により、グルー治療は全体的に安全性が高い治療法であることが示されました。しかし、合併症がゼロではない以上、医師の経験や設備、アフターケアの体制が整った施設を選ぶことが非常に重要です。
当院(目黒外科)では、これまで多数のグルー治療を行ってきた実績があり、術前説明から術後のフォローまで丁寧に対応しています。ご不安な方は、ぜひ一度ご相談ください。
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