若年でも油断禁物|下肢静脈瘤と深部静脈血栓症(DVT)の見落としポイントを専門医が解説

下肢静脈瘤の症状
若年でも油断禁物|下肢静脈瘤と深部静脈血栓症(DVT)の見落としポイントを専門医が解説

若年でも注意!下肢静脈瘤と血栓の見落とし箇所

「下肢静脈瘤(足の静脈瘤)は中高年の病気」というイメージは根強いのですが、若年でも起こります。さらに厄介なのは、“静脈瘤っぽい症状”の陰に血栓(深部静脈血栓症:DVT)が隠れているケースがあることです。

もちろん頻度としては、静脈瘤=すぐ血栓、ではありません。ですが、若年の場合は「まさか自分が」と油断しやすく、医療側も「若いから重症ではないだろう」と思い込むと、見落としが起きやすいポイントがいくつかあります。

この記事では、若年でも注意すべき「静脈瘤」と「血栓」の鑑別で、見落とされやすい箇所(=つまずきポイント)を、専門医の目線で整理します。

まず整理:下肢静脈瘤と血栓(DVT)は“別物”

下肢静脈瘤(足の静脈瘤)

下肢静脈瘤とは

  • 主に表在静脈(皮膚のすぐ下を走る静脈)で、静脈弁が壊れて逆流が起こる
  • 典型例は「ボコボコ・クネクネ」「だるさ」「夕方の重さ」「こむら返り」「かゆみ」など
  • 診断の基本は下肢静脈エコー(超音波)で逆流を確認

深部静脈血栓症(DVT)

深部静脈血栓症

  • 深部静脈(筋肉の中を走る静脈)に血栓ができる
  • 進行すると肺塞栓(血栓が肺に飛ぶ)につながる可能性がある
  • 症状は「片脚の腫れ」「痛み」「熱感」「押すと痛い」「急に悪化」など。ただし無症状もある
  • 評価の基本はリスク評価+エコー(必要により血液検査など)

重要:見た目が静脈瘤っぽくても、深部で血栓が起きていることはあります。逆に「痛い=血栓」とも限りません。だからこそ、“見落としやすい条件”を知っておくことが大切です。

若年で増える「見落としやすい背景」

若年の血栓(DVT)は、単純な“年齢”よりも、以下のような状況(トリガー)が鍵になります。

  • 長時間の同一姿勢:長距離フライト、車移動、デスクワークの連日、オンライン会議続き
  • 脱水:発熱、下痢、サウナ、過度の運動、飲酒後
  • ホルモン要因:ピル・ホルモン治療、妊娠・産後(※若年女性で重要)
  • 外傷・固定:捻挫や骨折後のギプス、膝の手術、スポーツ外傷
  • 喫煙、肥満、睡眠不足、強いストレス
  • 血栓素因(体質・家族歴):若年発症で疑うきっかけになることがある

つまり若年では「静脈瘤があるかどうか」より、血栓ができやすい条件が重なっていないかが見落とし防止のポイントになります。

見落とし箇所①: “ふくらはぎの痛み”を筋肉痛で片付ける

若い人は運動や仕事で脚を酷使することが多く、ふくらはぎの痛みを「筋肉痛」「肉離れっぽい」「疲労」と自己判断しがちです。ここが最初の落とし穴。

次の特徴がある場合、静脈瘤の症状だけではなく血栓の評価も視野に入ります。

  • 片脚だけが明らかに痛い・張る
  • いつもと違う急な発症、短期間で悪化
  • 触ると熱い、押すと強く痛い
  • 歩くと痛いが、安静でもジワジワ痛い
  • 直近に長距離移動・脱水・固定・ホルモン要因などがある

「若いから大丈夫」ではなく、状況と経過が重要です。

見落とし箇所②: “静脈瘤っぽい血管”=表在だけ、と思い込む

下肢静脈瘤は表在静脈の病気ですが、見た目が静脈瘤に見える血管でも、実際には以下のような別パターンが紛れていることがあります。

  • 表在性血栓性静脈炎:表在静脈に血栓ができ、硬い索状物+痛みが出る
  • 深部静脈のうっ滞が背景にあり、二次的に表在が目立っている
  • 別疾患(炎症・感染など)で赤みや痛みが先行している

見た目だけで決めず、エコーで「逆流」だけでなく「血栓がないか」まで確認することが安全です。

見落とし箇所③: “腫れ”が軽い/むしろ腫れていない

DVT=パンパンに腫れる、というイメージがありますが、実際には腫れが軽い・分かりにくいこともあります。特に若年は筋肉量があり、むくみが目立ちにくい場合があります。

腫れが目立たなくても、

  • 片脚の違和感が続く
  • いつもより靴下跡が片方だけ強い
  • 張り感や熱感がある

といった“微妙な差”がヒントになることがあります。

見落とし箇所④: “静脈瘤の場所”が典型から外れている

静脈瘤にも典型的なパターンがありますが、若年では「部位が非典型」「左右差が強い」「急に目立つ」など、いつもの静脈瘤の流れと違うことがあります。

例えば、

  • 急に血管が目立った
  • 局所的に赤く、痛い
  • 押すと強く痛む“しこり”がある

といった場合は、単なる静脈瘤の説明だけで終わらせず、血栓や炎症の鑑別が必要です。

見落とし箇所⑤: “息切れ・胸痛”を脚と結びつけない

これは非常に重要です。脚の血栓が肺に飛ぶと、息切れや胸の痛み、動悸、失神などが起こることがあります(肺塞栓)。

脚の症状+息切れ(または胸痛)がある場合は、自己判断せず、速やかに医療機関へ相談してください。ここは「様子見」が最も危険になり得る領域です。

結論:若年こそ「エコーでの確認」が後悔を減らす

若年の脚症状は、仕事・運動・生活習慣の影響が大きい一方で、血栓リスクが重なると見落としが起きます。

後悔しないコツはシンプルで、

  • 症状だけで決めず、経過(急性か慢性か)を見る
  • 状況(移動・脱水・ホルモン・固定など)を整理する
  • 必要なら下肢静脈エコーで「逆流+血栓の有無」を確認する

この3点で、誤解も不安も大きく減ります。

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※強い息切れ・胸痛・突然の片脚の著しい腫れなどがある場合は、画像診断ではなく早めに医療機関へご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 若くても下肢静脈瘤になりますか?

A. なります。遺伝要因、立ち仕事、運動習慣、体重変動、ホルモン要因などが重なると若年でも発症します。見た目だけでなく、だるさ・こむら返り・かゆみなどの症状が続く場合はエコーで逆流を確認すると安心です。

Q2. 静脈瘤と血栓は自分で見分けられますか?

A. 完全な見分けは難しいです。急な片脚の痛み、熱感、リスク要因(長距離移動・脱水・固定・ピルなど)がある場合は、血栓の評価を含めて医療機関で確認するのが安全です。

Q3. 受診するなら何科がよいですか?

A. 目安としては、下肢静脈エコーを適切に行える診療科(血管外科、循環器内科、下肢静脈瘤専門クリニックなど)です。「逆流」だけでなく「血栓の有無」まで評価できる体制があると、見落としが減ります。

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、診断や治療の代替ではありません。症状が強い、急に悪化した、息切れや胸痛を伴うなどの場合は、速やかに医療機関へご相談ください。

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この記事を執筆した人

斎藤Dr
齋藤Dr
目黒外科 院長 齋藤 陽

  • 日本大学医学部卒
  • 外科専門医・脈管専門医
  • 下肢静脈瘤血管内焼灼術・指導医

下肢静脈瘤ひとすじ28年。
「切らない」「縫わない」独自の技術により、これまでに行った手術件数は8000件以上。下肢静脈瘤レーザー手術件数は2020年以来5年連続日本一。
著者:「専門医が教える 世界一分かりやすい下肢静脈瘤の治療と予防」
メディア出演:日本テレビ「世界一受けたい授業」ほか

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