【陰部静脈瘤とは?】
陰部静脈瘤(いんぶじょうみゃくりゅう)とは、陰部の表面近くを流れる静脈がこぶのようにふくらんでしまう状態を指します。特に妊娠中の女性に多く見られる症状です。
ふくらんだ静脈は、紫色や青色で皮膚から透けて見えたり、触るとゴロゴロとした感触がある場合もあります。陰部の不快感や痛み、圧迫感などの症状が現れることがあります。
【陰部静脈瘤の原因とリスク】
最も多い原因は妊娠です。妊娠中は子宮が大きくなり、骨盤周辺の静脈が圧迫されて血流が滞ります。また、女性ホルモンの変化により血管が拡張しやすくなることも関係しています。
さらに、長時間の立ち仕事や便秘による腹圧の上昇も、陰部の血流を妨げる要因になります。出産後に自然と症状が軽くなることもありますが、慢性的に続く場合もあるため注意が必要です。
【陰部静脈瘤の治療法と受診のタイミング】
陰部静脈瘤は、妊娠中に見られることが多い症状ですが、妊娠中にこの症状に対して手術や硬化療法(注射によって血管を閉じる治療)を行うことはできません。
その理由として、治療に使用される薬剤や処置が母体や胎児に与える影響が否定できないためです。
多くの場合、陰部静脈瘤は出産後に自然と改善することが多いため、妊娠中は弾性ストッキングの着用や骨盤周囲の圧迫を避けるなどの保存的な対応が基本となります。
症状が強く、不安を感じる場合は、血管外科や婦人科に相談し、専門医の指導のもとで適切に経過を見ていくことが大切です。
陰部静脈瘤と骨盤内うっ血症候群の関連について
陰部静脈瘤は、単独で起こる場合もありますが、骨盤内うっ血症候群(Pelvic Congestion Syndrome:PCS)と呼ばれる病気と関連しているケースもあります。
骨盤内うっ血症候群とは、骨盤の中にある静脈が拡張して血液がうっ滞し、慢性的な下腹部痛や腰の重だるさ、性交時の痛みなどを引き起こす病気です。骨盤内うっ血症候群は、複数回の妊娠経験がある20~45歳の女性に多く見られます。
この病気によって、骨盤の静脈から血液が逆流し、その影響が外陰部や太ももの付け根にまで及ぶことで、陰部静脈瘤が現れることがあります。つまり、陰部静脈瘤は、骨盤内のうっ血の一つのサインとして現れている可能性があるのです。
こうした場合、外陰部だけに対する処置では症状が根本的に改善しないことがあり、骨盤内の静脈の状態を評価するために、CT検査やMRI、静脈造影などの検査が必要になることもあります。
なお、前述の通り、妊娠中は安全性の観点から手術や硬化療法は行えません。まずは症状をしっかりと把握し、出産後に必要があれば検査や治療を検討していくという流れになります。
陰部静脈瘤の裏に、骨盤内うっ血症候群が隠れていることもありますので、症状が続く場合や繰り返す場合は、血管外科や婦人科での専門的な診察を受けることが大切です。
まとめ
陰部静脈瘤は、決して珍しい病気ではなく、特に妊娠中の女性にとっては身近なものです。放置せず、症状が気になったら早めに専門医に相談することが大切です。
目黒外科のご紹介
目黒外科は、下肢静脈瘤をはじめとする静脈疾患の専門クリニックです。東京・目黒に位置し、完全予約制で一人ひとりの患者様に丁寧な診察と治療を行っています。
日曜も診療しており、忙しい方にも通いやすい環境を整えております。
陰部静脈瘤に関するご相談も承っておりますので、気になる症状がある方はお気軽にご連絡ください。