【医師監修】下肢静脈瘤とは?原因・症状・最新の治療法まで徹底解説

下肢静脈瘤とは



下肢静脈瘤とは?原因・症状・最新の切らない治療まで専門医が詳しく解説


下肢静脈瘤とは?原因・症状・最新治療法を専門医が詳しく解説!

下肢静脈瘤とは?原因と発症のしくみ

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは、脚の表面にある静脈が異常に拡張し、ボコボコと浮き出て見える疾患です。
原因は、血液の逆流を防ぐ役割を持つ静脈弁(じょうみゃくべん)の機能が壊れることで、血液が重力に逆らって心臓へ戻れず、足の静脈に血液が逆流・滞留してしまうことにあります。これにより、静脈が圧迫されて徐々に変形し、瘤(こぶ)のように浮き出てしまうのです。

下肢静脈瘤の症例画像1下肢静脈瘤の症例画像2

リスク要因としては、長時間の立ち仕事やデスクワークといった運動不足に加え、加齢による血管や筋肉の衰え、妊娠・出産によるホルモンバランスの変化や下半身への圧迫、さらには遺伝的な体質が関係していると考えられています。
特にふくらはぎの筋ポンプ機能が低下すると、血液を上に押し戻す力が弱まり、下肢静脈瘤が発症しやすくなります。

日本では、推定1,000万人以上が下肢静脈瘤を抱えていると言われており、中高年の女性を中心に非常に多く見られる疾患です。
発症していても痛みがないこともあり、「見た目だけの問題」と軽視されがちですが、放置すると進行して皮膚炎・色素沈着・潰瘍などの合併症を引き起こす恐れもあるため、早めの診断と適切な対応が重要です。

下肢静脈瘤の主な症状

こむら返り(足のつり)

夜中や明け方に突然ふくらはぎがつって激しい痛みで目が覚めることがあります。これは筋肉の異常収縮によるもので、下肢静脈瘤によって血液の流れが滞ると、筋肉に十分な酸素や栄養が届かなくなり、こむら返りを起こしやすくなります。
頻繁に足がつるようになった場合は、単なる疲れではなく、血管の異常を疑うサインかもしれません。

足のムズムズ感(レストレスレッグ症候群との違いにも注意)

夕方から夜にかけて足がムズムズして落ち着かず、じっとしていられない感覚が出る方もいます。これは静脈のうっ血による軽度の炎症や循環不全による神経の刺激が関与していると考えられています。レストレスレッグ症候群と似た症状ですが、見た目に血管の浮きがある、むくみが強いなどの特徴があれば、下肢静脈瘤が原因の可能性が高くなります。

血管の浮き出し

ふくらはぎや太ももの表面に、青くボコボコと蛇行した静脈が浮き出てくるのは下肢静脈瘤の代表的な症状です。これは、静脈内に血液が滞り、血管が内側から圧迫されて拡張・変形するためです。初期では見た目だけの変化でも、進行すると痛みや皮膚の異常を伴うようになります。

下肢静脈瘤の症状イラスト

むくみ(浮腫)

特に夕方になると足首やふくらはぎがパンパンに腫れ、靴や靴下の跡がくっきり残るようになります。
これは血液が静脈内に溜まり、静脈圧が高まることで血漿成分が周囲に滲み出すために起こる現象です。
朝はスッキリしていても、同じ時間帯にむくみが繰り返される場合は要注意です。

足のだるさ・重さ

1日立ち仕事をした日の夕方になると、足が鉛のように重く、だるく感じることがあります。これは静脈の血流が悪化し、老廃物や水分が脚に滞留してしまうためです。
休んでも回復しにくい疲労感が続く場合は、下肢静脈瘤の可能性を疑ってみましょう。

かゆみ・湿疹(うっ滞性皮膚炎の前兆)

膝下や内くるぶし周辺にかゆみや赤み、乾燥した湿疹が出ることがあります。
市販の保湿剤やかゆみ止めではなかなか改善しにくく、長期間続く場合はうっ滞性皮膚炎の始まりかもしれません。

色素沈着(皮膚の黒ずみ)

下肢静脈瘤が進行すると、膝から下の皮膚が茶色や黒っぽく変色してきます。これは血液中の鉄分(ヘモジデリン)が皮膚に沈着することで起こる現象で、一度沈着すると元に戻りにくいのが特徴です。さらに進行すると皮膚が硬くなり、皮膚潰瘍の前段階となることもあります。

これらの症状を放置すると、最終的には皮膚潰瘍(皮膚に治らない傷ができる)へ進行することもあります。早めの対応が重要です。

下肢静脈瘤の症状例写真

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下肢静脈瘤の治療法

下肢静脈瘤は自然に治ることはありませんが、症状や重症度に応じた方法で十分に改善が可能です。

1. 保存療法(手術をしない治療)

  • 弾性ストッキング(着圧ソックス):血管を適度に圧迫して血流を促進します。
  • 運動療法:ふくらはぎの筋肉を鍛えることで、ポンプ作用を高めます。
  • 生活習慣の改善:長時間同じ姿勢を避け、定期的に足を動かしましょう。

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2. 医療機関での根本治療

下肢静脈瘤の医療機関治療

現在は切らない・縫わない・日帰りが可能な血管内治療が主流で、ほとんどの患者さんが仕事を休まず治療を受けられます。

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よくある質問(FAQ)

Q. 血管が浮き出ているだけでも治療は必要ですか?

血管の浮き出しが見た目だけで痛みがない場合でも、すでに静脈弁の機能が低下している可能性があります。
放置すると色素沈着や皮膚炎、潰瘍につながるケースもあるため、一度専門医によるエコー検査を受けることをおすすめします。

Q. こむら返りが頻繁に起きるのは下肢静脈瘤が原因ですか?

夜間や朝方にふくらはぎがつることが増えた場合、血流の滞りが関係している可能性があります。
下肢静脈瘤の初期症状として現れることも多く、その他の症状(むくみ、だるさなど)があれば早めに受診してください。

Q. レーザーやグルー治療は痛いですか?

現在主流のレーザー・高周波・グルー治療は、いずれも「切らない」「縫わない」「痛くない」を特徴とした低侵襲の治療です。
手術中は点滴麻酔で眠っているため痛みはなく、手術後も大きな負担なく日常生活に戻れる方がほとんどです。

Q. 弾性ストッキングはいつ着用すればよいですか?

日中の立ち仕事や通勤・家事の時間帯に着用するのが基本です。就寝中の着用は基本的に不要ですが、医師から指示があった場合は従いましょう。
自分に合った圧迫力・サイズのものを使うことが大切です。

Q. 手術しなくても下肢静脈瘤は治りますか?

弾性ストッキングや運動療法で進行を抑えることは可能ですが、壊れた静脈弁が自然に治ることはありません
根本的な治療を希望される方は、血管内治療など医療機関での対応が必要です。

まとめ|気になる症状があれば早めに相談を

下肢静脈瘤は決して珍しい病気ではありません。症状が軽くても放置せず、早期発見・早期治療が重要です。

足の血管の浮きや、夜間のこむら返り、むくみやかゆみなどが気になる方は、ぜひ一度専門医に相談してみてください。

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