「静脈が太いから治療できないのでは?」と不安に感じる方へ。
実は、最新の医学研究では太い下肢静脈瘤(10mm以上)でも日帰りで安全に治療できることがわかっています。

太ももの伏在型静脈瘤
この記事では、2024年に発表された医学論文
「A systematic review on ablation techniques for larger saphenous veins」
(Anand Athavale ら, Journal of Vascular Surgery: Venous and Lymphatic Disorders)の内容を、専門医の立場からわかりやすくまとめました。
🩸 この研究の目的
この研究は、太い静脈(直径10mm以上)の下肢静脈瘤に対して、どの治療法が最も安全で効果的かを調べた世界的なレビュー論文です。
対象は1993〜2023年までの30年間に発表された全世界の研究です。
🔬 検討された主な治療法
治療法 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
EVLA(レーザー治療) | 静脈内にレーザーファイバーを入れて熱で閉鎖 | 成功率が高く標準治療 |
RFA(高周波治療) | 高周波エネルギーで静脈を閉じる | 痛みが少なく再発率が低い |
CAC(グルー治療) | 医療用接着剤で静脈を塞ぐ | 麻酔不要だが太い静脈では成功率低下 |
MOCA(メカノケミカル治療) | ワイヤーの回転+薬剤で閉鎖 (日本では行われていない) |
熱を使わず低侵襲だが再発しやすい |
フォーム硬化療法 | 泡状の薬剤で静脈を閉じる | 安価だが再開通が多い傾向 |
ストリッピング手術 | 静脈を物理的に抜き取る古典的手法 | 効果はあるが身体への負担が大きい |
📊 主な結果
- 解析された研究は24本。
- EVLA(レーザー治療)とRFA(高周波治療)の閉鎖成功率は90〜100%と非常に高い。
- 一方、グルー治療やMOCAでは太い静脈で閉鎖率が低下。
- フォーム硬化療法では12mm以上の血管で失敗率が67%。
- ストリッピング手術は効果は高いが痛みや出血が多い。
💡 太い静脈でも治療できる?
かつては「太い静脈はレーザーでは閉じない」と言われていましたが、現在は「上限なし」が世界の共通認識です。
ただし、照射エネルギーを増やす、麻酔液を十分に入れるなど、経験のある医師の技術が重要です。
⚠️ 副作用と安全性
血管内焼灼術(レーザー治療・高周波治療)でまれに深部静脈血栓(DVT)が起こることがありますが、その頻度はわずか1〜3%程度。
太い静脈の方がややリスクは高いものの、重篤な合併症は非常に少ないと報告されています。
✅ まとめ
- EVLA(レーザー)とRFA(高周波)が最も確実で安全
- グルー治療や薬剤治療は今後の研究に期待
- ストリッピング手術は効果があるが身体的負担が大きい
- 太い静脈でも熱治療で問題なく治療可能
👩⚕️ 専門医からのメッセージ
太い下肢静脈瘤でも、現在は切らずに・日帰りで・安全に治療ができます。
症状がある方は、放置せずに早めに専門医へご相談ください。
📚 参考文献
Athavale A, Monahan D, Fukaya E. A systematic review on ablation techniques for larger saphenous veins in patients with symptomatic superficial venous disease.
J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2024;12:101681.
監修:目黒外科 院長 齋藤 陽