抗凝固薬は必要?下肢静脈瘤と血栓治療の判断ポイント
下肢静脈瘤の患者さんからよくいただく質問の一つが、「血栓があると言われました。血栓を溶かす薬(抗凝固薬)は飲んだ方がいいですか?」というものです。
結論から言うと、すべての血栓に抗凝固薬が必要なわけではありません。
血栓の「場所」と「広がり」が治療方針を決める重要なポイントになります。
下肢静脈瘤にできる血栓の多くは「表在性」
下肢静脈瘤に関連して起こることが多いのは、表在性血栓性静脈炎です。

静脈血栓
- 皮膚のすぐ下の静脈に血栓ができる
- 赤く腫れる
- 押すと痛い
- しこりのように触れる

血栓性静脈炎
見た目にも分かりやすく、比較的よくある合併症です。
この段階では、基本的には
- 弾性ストッキングの着用
- 消炎鎮痛薬の使用
- 経過観察
といった保存的治療が中心になります。
この時点で必ずしも抗凝固薬は必要ではありません。
問題になるのは「血栓の進展」
注意が必要なのは、血栓が深部静脈に近づいてきた場合です。
表在静脈に生じる血栓性静脈炎が、血栓の進展により深部静脈に近くなった場合は、深部静脈血栓症(DVT)に準じて抗凝固剤を処方することもあります。
なぜ深部静脈が問題なのか?
深部静脈に血栓が及ぶと、
- 血栓が肺に飛ぶ(肺塞栓症)
- 命に関わるリスクがある
ため、治療方針が大きく変わります。
抗凝固薬を検討する具体的なケース
- 血栓が大伏在静脈の根元(大腿部付け根付近)に近い
- 超音波検査で血栓が深部静脈接合部に迫っている
- すでに深部静脈血栓症を合併している
- 血栓が急速に広がっている

深部静脈血栓症
このような場合には、抗凝固療法を一定期間行うことがあります。
使用する薬剤は、患者さんの年齢、腎機能、出血リスクなどを総合的に判断して決定します。
自己判断で薬を飲むのは危険
「血栓」と聞くと不安になりますが、
- すぐに「血液サラサラの薬」を飲めばいい
- 知人が飲んでいたから自分も
という判断は危険です。
抗凝固薬には出血リスクが伴います。
特に高齢の方や他の病気をお持ちの方では慎重な判断が必要です。
治療方針を決めるのは「超音波検査」
見た目や触診だけでは、血栓の広がりは分かりません。
超音波(エコー)検査で血栓の位置と範囲を正確に確認することが、治療判断の最重要ポイントです。
まとめ
- 下肢静脈瘤に伴う血栓の多くは表在性である
- 表在性血栓性静脈炎では抗凝固薬は必ずしも必要ではない
- 血栓が深部静脈に近づいた場合は抗凝固療法を検討する
- 判断には超音波検査が不可欠
「抗凝固薬が必要かどうか」は、血栓の状態によって異なります。
不安な場合は、まずは専門医による診察と超音波検査を受けることが大切です。
自己判断せず、適切なタイミングで正しい治療を受けましょう。


