ふくらはぎが痛い原因とは?考えられる病気と対処法を専門医が詳しく解説
ふくらはぎが痛い…。そんな経験、ありませんか?
「立ちっぱなしだったからかな」「ちょっと運動したせいかも」と軽く考えてしまいがちですが、ふくらはぎの痛みには、単なる筋肉疲労だけでなく、血流障害や神経障害といった重大な病気が隠れている場合もあります。
特に、痛みが長引く、片足だけ腫れる、皮膚の色が変わるといった症状が現れた場合は注意が必要です。
この記事では、ふくらはぎの痛みの原因や考えられる病気をわかりやすく整理し、日常でできるセルフケアの方法や、受診の目安について専門医の視点から詳しく解説します。
ふくらはぎの痛みを軽く考えず、正しく対処するために、ぜひ最後までご覧ください。
ふくらはぎが痛いときに考えられる原因
筋肉疲労や運動後の痛み
長時間の立ち仕事や激しい運動の後には、ふくらはぎの筋肉に疲労物質である乳酸が蓄積し、筋繊維が微細な損傷を受けることで痛みが出やすくなります。
通常、こうした筋肉痛は一時的なものですが、準備運動やストレッチを怠った場合や、運動中に十分な水分補給ができていなかった場合には、症状が悪化することもあります。
また、筋肉の疲労回復が追いつかないと、慢性的な張りや違和感が続くこともあり、血流の滞りを招いて別のトラブルにつながるリスクもあるため注意が必要です。
こむら返り(筋肉のけいれん)
寝ている間や運動中に、ふくらはぎが急につって激しい痛みを感じることは珍しくありません。
この「こむら返り」は、筋肉の異常な収縮によって起こり、電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなど)のバランスが崩れることや、筋肉疲労、脱水症状などが主な原因とされています。
特に寝ている間は血行が低下しやすく、水分不足や冷えもこむら返りを誘発しやすくなるため注意が必要です。
こむら返りについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
血流障害による痛み
ふくらはぎは、足の静脈にたまった血液を心臓へ押し戻す働きを持っていることから、「第二の心臓」とも呼ばれています。
歩行やふくらはぎの筋肉を動かすことで、筋肉がポンプのように収縮・弛緩を繰り返し、血液を上へ押し上げる仕組みです。
しかし、長時間立ちっぱなしだったり、逆に座りっぱなしで足を動かさない状態が続くと、このポンプ機能が低下して血液の流れが滞り、ふくらはぎにだるさや痛みを感じる原因となります。
静脈の血流が悪くなると、下肢静脈瘤という病気になり、むくみや皮膚の色素沈着、さらには皮膚潰瘍といった皮膚トラブルを引き起こすリスクが高まるため、注意が必要です。
また、血流障害は静脈だけでなく、動脈にも起こることがあります。
動脈が動脈硬化によって狭くなると、足に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、歩行時にふくらはぎや太ももに痛みを感じる「間欠性跛行」といった症状を引き起こします。
これは閉塞性動脈硬化症と呼ばれる病気で、進行すると安静時にも痛みが出たり、皮膚が青白く変色したり、重症例では足の組織が壊死することもあるため、早期発見と治療が重要です。
神経の問題による痛み
腰椎椎間板ヘルニアや坐骨神経痛など、腰からくる神経のトラブルが原因で、ふくらはぎに痛みやしびれが現れることもあります。
椎間板ヘルニアでは、背骨のクッションの役割をする椎間板が飛び出し、近くを通る神経を圧迫することで、足の後ろ側に電気が走るような痛みや、じんじんとしたしびれを引き起こします。
坐骨神経痛も同様に、腰から足先に伸びる太い神経が刺激されることで、ふくらはぎを含む下肢全体に違和感や痛みが広がるのが特徴です。
特に、腰の痛みを伴う場合や、歩行が困難になるほど症状が強い場合には、早めに整形外科を受診することが重要です。
ふくらはぎの痛みから疑われる病気
下肢静脈瘤
血液の逆流が起こると、足の静脈に通常よりも大きな圧力がかかり、血管が徐々にふくらみます。
その結果、ふくらはぎや太ももの皮膚の下に青紫色の血管が浮き出るようになり、見た目にも目立つようになります。
静脈内に血液が滞るため、足がだるく重く感じるだけでなく、立っている時間が長くなると痛みやむくみが悪化するのが特徴です。
放置すると皮膚が硬くなったり、色が茶色っぽく変色したり、最悪の場合は皮膚に傷(潰瘍)ができることもあります。
早期の診断と治療が、これらの進行を防ぐカギとなります。詳しくはこちらの記事もご覧ください。
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)は、足の深い部分を走る太い静脈(深部静脈)に血の塊(血栓)ができる病気です。
血栓が血管を塞ぐことで血液の流れが滞り、ふくらはぎや太ももが腫れたり、押さえると痛みを感じたりする症状が現れます。
特に、片側の足だけが急に腫れる、赤く熱を持つ、皮膚の色が青紫色に変わるといった場合は、深部静脈血栓症の可能性があり注意が必要です。
深部静脈血栓症の主な原因には、長時間の座りっぱなし(飛行機・バス・車での移動中など)、手術後や病気による長期の安静臥床、経口避妊薬(ピル)の服用、がんなどが挙げられます。
これらの状況では血液が滞りやすくなったり、血液が固まりやすい状態(高凝固状態)になることで、血栓ができやすくなります。
この病気を放置すると、血栓が血流に乗って肺へ流れ込み、肺の血管を詰まらせる「肺塞栓症」を引き起こすリスクがあり、最悪の場合は命に関わることもあります。
こうした症状が現れた場合は、自己判断せず、すぐに医療機関を受診しましょう。
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症は、足の動脈が動脈硬化によって徐々に狭くなり、十分な血液が行き渡らなくなる病気です。
歩行中にふくらはぎや太ももに痛みやだるさを感じるのが特徴で、少し休むと症状が和らぐことから「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と呼ばれます。
症状が進行すると、安静にしていても足に痛みを感じるようになったり、皮膚の色が青白く変わったり、最悪の場合は足の組織が壊死するリスクもあります。
特に、喫煙歴がある方や糖尿病、高血圧、脂質異常症などの持病を持つ方は発症リスクが高いため、注意が必要です。
坐骨神経痛
腰から足先にかけて伸びる坐骨神経が刺激や圧迫を受けると、お尻からふくらはぎ、さらには足先にかけて、電気が走るような鋭い痛みやしびれが出ることがあります。
特に、長時間座ったり、体を前かがみにしたときに痛みが悪化する場合は、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、神経を圧迫する病気が隠れている可能性もあります。
症状が片側に強く現れるのが特徴で、日常生活に支障をきたすようであれば、早めの整形外科受診が推奨されます。
ベーカー嚢腫(ベーカーのう腫)破裂
ふくらはぎの痛みの原因として、ベーカー嚢腫(ベーカーのう腫)の破裂も見逃せません。
ベーカー嚢腫とは、膝の裏側にある滑液包という袋状の組織に、関節液が過剰にたまった状態です。
通常は膝の裏に柔らかいふくらみを感じる程度ですが、嚢腫が破裂すると中の液体がふくらはぎの筋肉に漏れ出し、ある日突然、膝からふくらはぎにかけて強い痛みと腫れを引き起こします。
見た目にはふくらはぎが大きく腫れ、熱感や赤みを伴うこともあり、痛みのために歩行が困難になることもあります。
破裂した際の症状は、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)とよく似ているため、自己判断せず、医療機関で正確な診断を受けることが重要です。
超音波検査(エコー検査)やMRIなどの画像検査によって、血栓ではなく関節液の漏れであることが確認されれば、基本的には安静と消炎鎮痛薬による保存的な治療が行われます。
ただし、痛みや腫れが強い場合や、嚢腫が再発しやすい場合には、根本治療として関節内部の問題(変形性膝関節症など)への対処が必要になることもあります。
ふくらはぎが痛いときのセルフチェック方法
こんな症状があったら要注意|病院受診の目安
ふくらはぎに痛みや違和感を感じたとき、次のような症状が見られる場合は、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。
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片足だけが腫れている
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ふくらはぎに赤みや熱を感じる
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痛みが徐々に悪化している
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しびれがある、感覚が鈍い
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足の色が紫色や青色に変わってきた
- 痛みが強くて歩けない
さらに、以下のような緊急性の高い症状がある場合は、ためらわずすぐに救急車を呼んでください!🚑
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胸の痛みや呼吸困難がある
これらの症状が現れた場合は、血栓が肺に流れ込み「肺塞栓症」を引き起こしている可能性があり、放置すると命に関わる危険性があります。
自己判断せず、できるだけ早く専門の医療機関を受診するようにしましょう。
ふくらはぎの痛みを和らげるセルフケア・対処法
まずは安静とアイシング
急にふくらはぎに強い痛みが出た場合は、まず患部を冷やして炎症を抑えることが大切です。
冷却することで血管が収縮し、腫れや痛みを最小限に抑える効果が期待できます。
アイスパックや冷却ジェルなどを直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため、必ずタオルなどで包んでからふくらはぎにあてましょう。
1回あたりの冷却時間は15〜20分程度を目安にし、強い痛みや腫れが続く場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
軽いストレッチやマッサージ
筋肉疲労が原因でふくらはぎに痛みや張りを感じている場合は、無理のない範囲でストレッチやマッサージを行い、血流を促進することが効果的です。
やさしく筋肉を伸ばすストレッチは、筋肉にたまった老廃物の排出を促し、回復を早める効果があります。
また、軽くさする程度のマッサージも血行を改善し、疲労物質の代謝を助けるため、痛みや違和感の緩和に役立ちます。
ただし、深部静脈血栓症(DVT)が疑われる場合には、足をマッサージするのは危険です。
血栓が血流に乗って肺へ移動し、命に関わる肺塞栓症を引き起こすリスクがあるため、強い腫れや痛みなどの症状がある場合は自己判断でマッサージを行わず、すぐに医療機関を受診してください。
また、通常の筋肉疲労でも、強く押しすぎたり、無理に伸ばしたりすると筋肉や血管を傷める恐れがあるため、痛みを感じない範囲で優しく行うことが大切です。
弾性ストッキングの着用
血流障害が原因でふくらはぎに痛みや違和感がある場合、特に下肢静脈瘤など静脈の病気が原因であれば、医療用の弾性ストッキングを着用することで血液の循環を効果的にサポートすることができます。
弾性ストッキングは、足首からふくらはぎ、太ももにかけて段階的に圧力を加える設計になっており、血液が心臓に戻るのを助けるポンプ機能を補助します。
これにより、血液のうっ滞を防ぎ、足の痛みやむくみ、だるさといった症状の緩和に役立ちます。
ただし、閉塞性動脈硬化症など動脈の血流が悪くなる病気が原因の場合は、弾性ストッキングの使用が症状を悪化させるリスクがあるため、着用しない方がよいとされています。
そのため、自己判断で市販品を購入するのではなく、医療機関で正確な診断を受けたうえで、自分に合ったストッキングを処方してもらうことが大切です。
まとめ:ふくらはぎの痛みを甘く見ず、早めの対処を!
ふくらはぎの痛みは、単なる筋肉疲労や一時的なこむら返りのこともありますが、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)や閉塞性動脈硬化症、坐骨神経痛といった重大な病気が隠れている場合もあります。
特に、片足だけが急に腫れたり、強い痛みやしびれ、皮膚の色の変化、呼吸困難などの症状がある場合は注意が必要です。
こうした症状を見逃して放置すると、命に関わる深刻な合併症を引き起こす可能性もあるため、軽く考えず、違和感を感じた段階で医療機関を受診することが大切です。
自己判断に頼らず、専門医による正確な診断を受け、必要な治療やケアにつなげましょう。
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