下肢静脈瘤って何?原因と世界の現状をわかりやすく解説!
「足の血管がボコボコしてきた…」「なんだか足が重いし、夕方にはむくんでくる」
そんな症状、もしかすると“下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)”かもしれません。

下肢静脈瘤の画像
今回は、世界中で問題になっているこの病気について、最新の医学論文をもとにやさしく解説します。
下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤は、足の表面にある静脈がふくらんで蛇行してしまう病気です。見た目にもわかりやすく、血管がボコボコ浮き出たり、色が青紫に変色したりします。
原因は、静脈にある「逆流防止の弁」が壊れてしまい、血液が逆流してたまってしまうことです。その結果、静脈に負担がかかり、血管が広がってしまうのです。
どんな症状があるの?
- 足の痛みやだるさ
- むくみ
- ふくらはぎの重さや疲労感
- 夜間の足のつり(こむら返り)
- チクチクした痛みやかゆみ
- 皮膚の変色、炎症、かさつき
- ひどくなると皮膚潰瘍や出血も
世界でどれくらいの人がなるの?
なんと世界では2%〜73%の人が下肢静脈瘤になっていると言われています!
たとえば:
- アメリカ:女性の約25%、男性の約15%
- 日本:中等度まで含めると45%
- サウジアラビア:62%
- イタリア:77%(世界最高レベル)
- パキスタン:16〜20%
つまり、誰でもなり得る、とても身近な病気なんです。
なぜ下肢静脈瘤になるの?下肢静脈瘤のリスク要因
年齢
年齢は、下肢静脈瘤をはじめとするさまざまな病気の発症や進行に深く関係している重要な要因です。多くの研究では、加齢とともにふくらはぎの筋力が衰えたり、静脈の弁の柔軟性が低下することで発症率が高くなると報告されています。
たとえば、65歳以上になると発症率が約2倍に増加し、71〜80歳では82.1%という非常に高い割合が確認されています。
性別
多くの研究では、男性よりも女性の方が下肢静脈瘤を発症しやすいとされています。特に妊娠やホルモンの影響が関係していると考えられますが、一部の研究では性差がないとする報告もあります。
世界的には、女性で1〜73%、男性で2〜56%と、女性の方が発症率が高い傾向にあります。
家族歴
家族に下肢静脈瘤の患者がいると、自分も発症するリスクが高まります。特に両親が下肢静脈瘤だった場合、子どもが発症する確率は90%にのぼるというデータもあります。
一方で、家族歴がなくても発症する人もいるため、遺伝は強いリスク要因のひとつですが、それだけではありません。
職業
長時間立ちっぱなしの職業は、下肢静脈瘤の大きな原因となります。たとえば以下の職業が該当します:
- 教師
- 看護師
- 美容師
- 販売員
- 警備員
韓国やイランなどで行われた調査でも、立ち仕事に従事する人の約65〜73%が静脈瘤を患っていると報告されています。
妊娠と出産
妊娠は女性にとって下肢静脈瘤の大きなリスク要因です。妊娠中はホルモンバランスの変化や体重の増加、血流量の増加、子宮による圧迫などが静脈に負担をかけます。
出産経験が多いほど発症率が上がり、3回以上出産した女性の75%が下肢静脈瘤を発症したという研究もあります。
BMIと肥満
特に女性において、BMIが高い(肥満)と静脈にかかる圧力が増し、血液がたまりやすくなります。その結果、静脈瘤が起こりやすくなります。
男性ではBMIとの関連は明確ではないとする研究もありますが、肥満は避けた方がよいリスク因子であることは間違いありません。
運動
運動不足は下肢静脈瘤のリスクを高めます。ふくらはぎの筋肉を動かすことで静脈の血流が促されるため、適度な運動は予防に有効です。
手術後の患者に対する研究では、運動によって血管機能が改善されることも報告されています。
遺伝子
最近の研究で、静脈瘤(じょうみゃくりゅう)には遺伝子の異常が関係していることがわかってきました。
特に、「FOXC2(フォックスシーツー)」という遺伝子に問題があると、血液の逆流を防ぐ“静脈の弁”がうまく働かなくなることがあると報告されています。
また、「TM」や「MTHFR」という名前の遺伝子も、静脈瘤と関係している可能性があり、今後さらに詳しい研究が進められると考えられています。
さらに、静脈瘤が悪化していくと、体の中ではこんな変化が起こります:
-
血管をしなやかに保つ「コラーゲン」や「エラスチン」という成分が減ってしまう
-
体の中で炎症を起こす物質(サイトカイン)が増える
-
血管の内側にある細胞のバランスがくずれてしまう
こうした変化によって、血管が広がったり、血液がたまりやすくなって、静脈瘤がどんどん進んでしまうのです。
こんな合併症にも注意!
重症化すると、以下のような合併症も起こります。
- 皮膚の色が茶色くなる(色素沈着)
- 皮膚が硬くなる(脂肪皮膚硬化症)
- 皮膚潰瘍(なかなか治らない傷)
- 血管の破裂による出血(命に関わるケースも)
どうやって予防できるの?
完全な予防は難しいですが、以下のような生活習慣が予防に役立ちます。
- 長時間同じ姿勢を避ける
- ウォーキングなど軽い運動を習慣化
- 足を高くして休む
- 弾性ストッキングを使う
- 体重管理をする
まとめ:放置しないで、早めに対策を!
下肢静脈瘤は「見た目の問題」と思われがちですが、実は放置すると命に関わることもある病気です。
足のだるさや血管の浮き出しに気づいたら、早めに専門の医師に相談しましょう!
参考文献
Aslam MR, et al. (2022). Global impact and contributing factors in varicose vein disease development. SAGE Open Medicine. https://doi.org/10.1177/20503121221118992